私は決断に迷うときは、いつもこう考えます。
「もしあと一年の命だとしたら、どちらを選択するか」
すると不思議と、心の霧がスーっと晴れて、素直に決断できるようになるのです。
つい先日も仕事の中でこんなことがありました。ケアマネジャーの私は仕事で担当しているある一人暮らしの高齢女性の生活の様子を、遠方に住む息子さんに電話で伝える機会がありました。その女性は、何とか一人で暮らしているものの、身体機能もかなり低下していて時々支援に入っているヘルパーさんから見たら、生活自体がとても危なっかしくて、いつ転ぶか、いつ火事を起こすかわからないためとても心配な方でした。でも、息子さんは母親のその状態をを受け入れられず、いつも私が電話報告すると、「そんなことはない!大丈夫だ!」と言って、私が提案するサービスなどを頑なに拒否し、しまいには「そんなに(サービスを使わせて)金儲けしたいのか!」と逆切れするのでした。
そんなある時、ヘルパーが訪問したらその方は失禁して寝具を濡らし、自分で着替えようとして服を脱ぎ、その後一人で服を着ることができずに裸で震えていたという事がありました。冬の寒い時期で暖房も入っていない部屋です。その報告を受けた私は、息子さんに電話で、ヘルパーの訪問を増やし、時々日帰りのデイサービスや泊りのショートステイなどを使う事を提案しようかと頭に浮かんだのですが、ここで迷ったのです。
「いくら説明しても逆切れされて、金儲けと言われるから、放っておけばいいのかな・・・」
「それとも状況報告だけはして、サービスの提案はしないほうがいいのかな・・・」
「いや、それでもその女性のために、逆切れされたとしてもサービス提案すべきなのかな・・・」
そんな風に迷っていた時にふと、「あと一年の命だとしたらどう判断するかな?」と思ったのです。すると不思議にも、あっという間に結論が出ました。その結論は、「例え逆切れされてもサービス提案をすること」でした。
なぜこのような判断がすぐにできたか、それは結局のところ私の迷いの根本的な原因は、「息子さんに逆切れされるのが怖かった」ことだったのです。だから色々理由をつけて逃げ道を探していただけなのです。
でも「あと一年の命」と考えたら、その瞬間「逆切れする息子さん」が怖くなくなった・・・そうすると、自分がケアマネジャーとしてやるべきことが当たり前に判断できたという事なのでした。
人は、自分を守ろうとすると正しい判断ができなくなるのかも知れませんね。今回久々にケアマネジャーの仕事の話でした。