「えんじょるの」が目指す世の中

【人助けに不慣れな日本人】

 日本ケアラー連盟が行ったアンケートによると、日本人の9割は「助け合いは大切だ」と思っているそうです。 しかしその調査結果と裏腹に、「一月の間に人助けをしたかどうか」の国別ランキング(Charities Aid Foundation World Giving Index 2021)では、日本は114ヵ国中ダントツの最下位。想いはあるのに行動できない日本人の実態が明らかになりました。

 また別の例ですが、先日、私の友人の女性が駅前を歩いていると後ろから来た自転車に追突されて転倒しました。周りには大勢の歩行者がいたのに、誰もが彼女を遠巻きに見つめるだけで、起き上がるために手を貸したり、声をかけた人は一人もいませんでした。友人は惨めな思いで立ち上がり、その場を後にしたそうです。これは、行動に移せない日本人の一例です。ここで周りの人が彼女を助けなかった理由は、そこにいた人々の心が冷たいからではなく、どういう行動をしたら良いのか分からなかったことが一番の原因ではないかと思います。つまり、過去に人助けをした経験がないからとっさに行動に移せなかったのではないでしょうか。

 このことから、世の中に助け合いを広げる為には、人々が人助けの経験を積んでおく事が大切であると私は考えます。そのような経験を積むためには、普段から身近に「気軽に人助け活動に参加できる環境」があることが大切です。

 

【日本に残された道は、「助け合い」だけ】

 超高齢化社会の日本では、全国いたるところに日々の暮らしの中で手助けを必要としている高齢者がいます。 しかしながら、これらの高齢者の生活を支援するサービスの量は、 全く足りていません。理由はこれらのサービスはどれも高い運営コストがかかるため、 高齢者も事業者も、それに国や自治体もそのコストを負担することができないからです。 そこで国が打ち出した方策は、「地域包括ケアシステム」というものです。「地域包括ケアシステム」では地域の助け合いで高齢者の生活を支援することを目指しています。つまりお金がない以上、高齢者の生活を支える為には、人々が助け合うしかないと国も考えているいうことです。

 そこで私は、 「地域包括ケアシステム」を実現するために、地域住民が気軽に助け合える新たな仕組みを作ろうと考えました。またその仕組みを広げていく過程で、多くの人々が人助けを経験することができ、その結果社会全体に助け合いが広がっていくのではないかと考えました。 

 

【「繋がりやすさ」を重視したシステム「えんじょるの」】

 日本人は周りに助けを求めるのが苦手です。それは人に助けを求めることは人に迷惑をかけることと考えるからです。だから人に頭を下げて頼むよりも、じっと一人で我慢しがちです。そうすると周りの人は、その人が困っていることに気がつかなかったり、たとえ困ってそうに見えていても、 助けを求められない以上、手出しをすると迷惑に思われるかもしれないと感じてしまいます。だから日本では一向に助け合いが広がりません。

 つまりこのことからも分かるように、日本で助け合いを広げるためには 、周りの人が「気づいてあげること」や「勇気を出して声をかけること」よりも、 助けて欲しい人が「気軽に SOS を出せること」の方が大切なのです。 もしSOSを出す人が増えれば、周りの多くの人がSOSに気づくことができます。そうしたらその次に大切なことは、周りの人が 「気軽に」手伝えることです。つまり、SOSに気付いた周りの人が、時間的も労力的にも経済的にも負担の少ない形で手助けできる仕組みがあれば、大勢の人が手助けしてくれる様になると思います。

 このように助け合いを広げる為には、「助けてほしい人」が気軽にSOSを発信出来て、同時に「助けてあげたい人」が気軽に手伝える、そんな両者が繋がりやすい仕組みが必要なのです。

 このような考えで私は、地域住民同士が気軽に助け合えるシステム「えんじょるの」を開発しました。私はこの「えんじょるの」を全国に広げて、たくさんの人々に人助けに参加してもらい、そして人助けの経験を積んでいただき、最終的には助け合いにあふれる暖かい社会を作りたいと思います。

 

【「えんじょるの」を使った助け合い】

 インターネットの普及ででてきたマッチング技術。これを助け合いに使えば、高齢者にとっては非常に役立つものになります。しかし、いかんせん高齢者はスマホが使えない人が殆どです。そこで、最近は様々な企業が高齢者でも使いやすい通信機器を開発して高齢者に使わせようとしていますが、私の長年のケアマネジャーとしての感覚では、いくら簡単な操作であったとしても「新しい機械」というだけで、高齢者は絶対使えないのです。だから私は、高齢者が最も使い慣れた通信機器、すなわち「電話」でインターネットに接続させようと考えました。えんじょるのは、「買物に困っている人」と「地域のボランティア」を、電話で着信を入れるだけで インターネット上にSOSを出してマッチングさせることができる、日本で初めてのウエブシステムです。だから電話しか使えない高齢者でもIT技術の恩恵を得られます。

 現時点では、「えんじょるの」は買い物代行だけに特化したシステムですが、今後このマッチング機能を使って高齢者から特にニーズが高い8個の支援メニュー(外出付き添い・ゴミ出し・片付けや掃除・傾聴や相談・見守り・雪かき・日帰り温泉付添い)を増やす計画です。

 

2022年は、「えんじょるの」を採用して下さっている御代田町社会福祉協議会とタッグを組んで、この低コストで手軽に運用可能なシステムの効果を実証していきます。

近い将来、必ず日本全国に広まると確信しています。今年も暖かいご支援をお願いいたします!

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