前回は、お手伝いとケアは性質が違うことをお伝えしました。では今回はこの「お手伝いやケア」が実際に子供の生活の中に入ってきたときの影響についてみていきます。
まず結論から言ってしまうと、「お手伝いもケアも、問題はその負荷の”量”にある」ということです。
まずはこの図をご覧ください。これは子供が小学生から大人になる過程でやらなければならない事(やること)が一気に増えていくことを表している図です。皆様もイメージが沸くのではないでしょうか?中学生になると勉強は一気に難しくなり、部活動や、交友関係も複雑化してきます。そして成人する頃には、たいていの人は毎日やることが一杯で余裕のない生活を送る事になります。これが一般的な子供の成長です。
そしてここに「お手伝いやケア」が入ってくるとどうなるか。例えば10歳の子どもの場合は、こうなります。
10歳の子供はやること自体が少ないので、お手伝いやケアが入ってもまだまだ限界ラインまでは余裕があります。むしろ、この時期は、進んでお手伝いやケアをしてくれる子供が多いと思います。何故なら「自分は家族の役に立っている」といったやりがいを感じるためです。
次にこれが15歳の中学3年生ごろになるとどうなるでしょうか
この図のように、お手伝いやケアの量が変わらなくても自分のやることが急激に増えてきてしまったため、物理的にも精神的にも余裕がなく限界ギリギリの状態になってしまいます。これがもし、子供が成長したからと言ってお手伝いやケアの量まで増えてしまったとしたら、あっという間に限界ラインに到達してしまうでしょう。そして次に、高校3年生位になるとどうでしょうか?
この図のように限界ラインに到達して頭打ちになってしまいます。こうなるとどうなるかと言うと、まずお手伝いとしてやっていた子は逃げます。だからお手伝いの場合はいくら親が沢山やらせたとしても、もし限界ラインに到達したら子供は自ら逃げることができるので問題にはなりません。しかし問題は家族のケアを担っている子供です。家族のケアからは逃げることができないので、子供は限界ラインに到達したまま家族のケアを行うようになります。そしてケアで圧迫された分、仕方なく自分のやるべきことを削ることになります。この状態が大学生・社会人になってもずっと続いていくことになるのです。このようにケアに圧迫されている状態が続くと、自分のやることはいつまでも制限され続ける事になります。
この状態が続くことが、ヤングケアラーが抱える問題につがなるのです。
では次の最終回は、この問題の中身について詳しく説明すると共に、周りの人がヤングケアラーに対してどのような支援をしたら良いかをお伝えしますね。